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台湾訛りの中国語の特徴とは?大陸中国語との違いまとめ

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中国語は中国だけで話されていると思われることも多いですが、実際には台湾・シンガポール・マレーシアといったアジアの国や地域で広く話されている言語でもあります。

言語が広く広がっているということは、同時にそれだけ多くの訛りが存在するとも言えます。特に中国語では北京や大連を中心とする北方訛りと、台湾など中心とする南方訛りではっきり発音に差があります。

特に「台湾中国語」「台湾華語」などとも呼ばれる台湾訛りの中国語は、台湾の持つ独自性や文化などから一度は耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか(あえて台湾訛りの中国語を学びたいと思う日本人もいるぐらいです)。

今回は台湾訛りの中国語の特徴について紹介していきたいと思います。

1.舌をあまり巻かない or 全く巻かない

台湾の中国語と聞いて真っ先に挙がるのが、「舌を巻くか否か」です。ピンインでいうところの「zh」「ch」「sh」「r」はそり舌音とされ、舌を反らせた少しこもった音と説明されることが多いと思いますし、参考書や試験の音声もどちらかというと北方に近い、つまり舌を反った感じで聞こえるはずです。

その一方、台湾の中国語は舌を反らずに発音するのが特徴です。で「zh」「ch」「sh」は「z」「c」「s」と発音されることが多いですし、「r」もかなり抑えめです。

なので、「我是~」はあえてカタカナ表記するとすれば「ウォーシー」と発音されるのが普通ですが、台湾(や中国の南の方)では「ウォースー」と発音されます。「四十四」は「スースースー」になってしまいます。

ただし、人にもよります。よーく耳を澄ますと微妙に舌を巻いているように聞こえることもありますし、まったく巻いていない時もあります。最初のうちは聞き取りずらいかもしれませんが、慣れれば問題ありません。

2.音がつながりやすい

音がつながりやすいのも台湾訛りの特徴です。Youtubeなどの台湾人のチャンネルやバラエティ番組を見てもらえばわかりますが、彼らの話す中国語はかなりの音がつながっていたり落ちたりしていて、慣れるまでは相当聞き取りずらいと思います。

英語のリンキングと違う点としては、極めて砕けた話し方ということでしょう。ニュースや会見などの公式な場では、音は一つ一つはっきり発音されるという印象です。逆に、現地の人同士のインフォーマルな会話では、頻繁に音が落ちたりつながったりします。

例)

大家好:da jia hao → da a (h)ao

你知道嗎?:ni zhi dao ma → ni zao ma

台湾人がどんだけ楽な発音をしているかわかると思います(笑)

3.四声の差が小さい

中国の、特に北方の中国語と比べて台湾の中国語は四声の幅がそこまで広くありません。つまり、1声の高さと3声の高さの差が小さいということです。

日本人にとってはかなりあいまいに感じられるので、聴き取るときには少し神経を使うことになると思います。ただし、発音する際には楽です。

4.軽声がほとんどない

中国語の発音では定番の軽声ですが、台湾の中国語ではほとんど登場しません。

例)

没关系:mei2 guan1 xi →mei2 guan1 xi4 または mei2 guan1 xi1

東西:dong1 xi → dong1 xi1

大陸の中国語に聞きなれた人からすると、何かふわっとしたような、抜けていくような印象を覚えると思います。

5.R化がない

教科書の中ではたくさん出てくるR化も、台湾の中国語には存在しません。というか、R化は中国の中でも北の方にしかないと思います。「而」「二」などもそこまで強く舌を巻くことはありません。

例)

一点儿→一点点

6.鼻母音の区別をしないことが多い

「in」「ing」や「an」「ang」、「en」「eng」といった鼻母音の聞き分けをしないケースが多いです。

鼻母音の聞き分けや言い分けは日本人だけでなく、台湾人にとっても難しいようですね。

7.語尾に語気助詞がよくつけられる

語気助詞の多さは、台湾訛りの中国語の大きな特徴の一つです。語気助詞というのは、「啊」や「喔」のような、それ自体に意味はないけれど語尾につける語句のこと。日本語でいう「~ね」「~さ」「~な」みたいなもので、話し手の意思や感情を表現しているものと思ってよいと思います。

日本語「好啊」「対啊」などでしょう。もちろん大陸の方も使うことがありますが、台湾人の使う比率は比べ物にならないほど高いです。

おまけに、何かと台湾人は語尾を伸ばす傾向が多めです。語気助詞が豊富な関連しているのかもしれません。

8.漢字の読み方が違う

「訛り」には含まれませんが、書き言葉といった面では簡体字ではなく繁体字を使う点やピンインではなく注音符号を用いている点など差は多いです。

例)广(簡体字)・広(日本の新字体)・廣(繁体字

簡体字は中国大陸とマレーシア・シンガポール繁体字も使用)で、繁体字は台湾と香港・マカオで使われています。基本的なつくりは似ているので、見てお互いに意味が分からないことは少ないですが、新しく覚える場合には注意が必要でしょう。

また、中国語の入力方法として中国大陸ではラテン文字で転写される「ピンイン」を用いています(この記事内でもピンインを使って中国語の発音を表しています)が、台湾では注音符号と呼ばれる独特な文字を使っています。少しひらがなにも似ています。

 9.語彙が違う

政治的にも文化的にも簡体字圏と繁体字圏は長く隔たれてきたため、語彙には違いがあります。特に、海外から入ってきた新しい語彙などにはその傾向が強いようです。

例)

タクシー:出租車→計程車

ブログ:博客→部落客

「部落客」は、言うまでもなく英語の発音を元にした当て字です。

10.漢字の読み方が違う

例)和:he2→han4

最も有名な漢字の読みの違いは「和」だと思います。「和」は英語で言う「with」、日本語でいう助詞の「と」の意味ですが、中国人が「我和你 wo3 he2 ni3」というところを、台湾人は「我和你 wo3 han4 ni3」ということになります。中国語学習者にとってはかなり違和感があるのではないでしょうか。

「和」以外にも、液体の「液」、期待の「期」など、いくつかの漢字は読み方が違うケースがあります。

まとめ

ここまで台湾訛りの中国語の特徴をまとめてきましたが、第一印象は「曖昧」という点ではないでしょうか。

日本人が頑張って区別しようとしている反り舌音、鼻母音の区別などを彼らはないものとして日常生活を送っています。中国語の発音はもちろん大切ですが、それに拘り過ぎるあまり話せなくなるのは一番最悪なパターンですし、中国語はさまざまな訛りがあるので、ある意味ではおおらかな言語ともいえます。

台湾中国語の特に発音面については、元々台湾に根付いていた「台湾語」の影響を受けているとも考えられます。

台湾訛りが良い、北京訛りが良いなどということをいう必要はありませんが、同じ言語でも地域によって全く話され方が違うという点は頭の片隅に入れておきましょう。